「時系列解析へのいざない」谷口正信氏講演にみる研究フロンティア
早稲田大学の谷口正信氏は、2018年日本数学会秋季総合分科会(岡山大学)の企画特別講演「時系列解析へのいざない」で、時系列解析における理論・応用の広がりをアラカルト形式で紹介した。
出発点: 金融収益率データの非線形性
IBMの日次株価収益率を例に、系列そのものの自己相関はほぼ0に近いが、系列を2乗した系列には強い自己相関が残ることを示した。これは系列が非独立かつ非正規であることを意味し、Black-Scholesモデルが仮定する幾何ブラウン運動では捉えきれない構造があることを示唆する。
扱われた主要トピック
- ARCHモデルとその一般化であるCHARNモデル、および局所漸近正規性(LAN)理論に基づく最適推測
- 脳波・筋電位など多変量生体信号への応用
- スペクトル構造が時間変化する局所定常過程と、それに基づく時系列の判別・クラスタリング(日本企業の株価収益率の業種分類など)
- Hurst指数とFARIMAモデルによる長期記憶過程の記述
- 時系列の依存構造を考慮した統計的最適ポートフォリオ理論とその年金運用への応用
- パラメータが定義域の境界にある場合やスペクトル密度が不連続な場合など、標準的な漸近理論が崩れる非正則な設定における推測理論
講演は「時系列解析は理論、応用とも膨大な領域として発展中である」という言葉で締めくくられている。本サイトの講義・手法ページでは、このうち非線形モデル・局所定常過程・長期記憶過程・統計的ポートフォリオ理論を取り上げている。