長期記憶過程とFARIMAモデル
平易に言うと: 過去の影響が普通のARIMAより遥かにゆっくりとしか消えていかない系列を記述するためのモデル。
前提知識
- [[autocorrelation]] 自己共分散の基礎
- [[arima]] ARIMAモデルの基礎
利用シーン
河川流量など水文学データの分析、通信トラフィックの解析、日経平均やS&P500など金融指標の長期依存性の検証。
通常の時系列解析では、自己共分散関数R(l)の絶対値和が有限である短期記憶過程を前提とすることが多い。しかし水文学や経済学では、この前提が成り立たないデータが報告されている。
Hurst指数と長期記憶性
Hurst (1951) はナイル川の水位の観測から、自己共分散が次のように緩やかにしか減衰しないことを見出した。
このときΣ|R(l)|は発散し、長期記憶過程と呼ばれる。日経平均やS&P500のような総合指標も長期記憶性を持つことが実証的に知られている。Granger (1980) は、短期記憶過程を多数集計(aggregation)すると長期記憶過程が生まれることを理論的に示した。
FARIMA(p, d, q)モデル
長期記憶性を持つ代表的なスペクトル密度関数は、分数和分ARIMA(FARIMA)モデルにより次の形で与えられる。
分数差分パラメータdとHurst指数Hの間にはd = H - 1/2という関係がある。dが非整数であることが、通常のARIMAの整数階差分では捉えられない緩やかな記憶減衰を表現する。
用語集
- 短期記憶過程: 自己共分散の絶対値和が有限である通常の過程
- 長期記憶過程: 自己共分散の絶対値和が発散するほど緩やかに減衰する過程
- Hurst指数(H): 長期記憶の強さを表す指標
- FARIMA: 分数階の差分パラメータdを持つARIMAの拡張モデル