単位根過程と見せかけの回帰
平易に言うと: 過去のショックを忘れずに蓄積し続ける「酔歩」的な系列同士を回帰分析にかけると、本当は無関係なのに強い関係があるように見えてしまう。この罠を見抜き回避する方法。
前提知識
- AR(1)モデル、[[lag-operator-box-jenkins]]のラグ演算子
- 仮説検定(t検定、臨界値)の基礎
利用シーン
経済・金融データを回帰分析にかける前のチェック。ADF検定で単位根の有無を確認するのは標準的な作業手順。
特性方程式と単位根
システム固有の動学特性を調べるため外部ショックを遮断(εt=0)すると、自律的な同次方程式に帰着する。AR(1)モデルにラグ演算子を適用し整理すると、次の特性方程式が得られる。
この方程式の根はz = 1/φ1となる。φ1 = 1のとき根がちょうどz = 1となる現象を単位根(Unit Root)と呼ぶ。
- |z| > 1(単位円の外側): φ < 1であり、過去のショックを忘却して平均へ回帰する(定常)
- z = 1(単位円の境界線上): φ = 1のランダムウォーク状態。統計学的な構造変化を引き起こす
中心極限定理の崩壊と見せかけの回帰
単位根過程では分散がtの速度で爆発し強烈な自己相関が持続するため、サンプルサイズを無限大に飛ばしても平均や変動が正規分布に収束しない。分母の拡張速度が通常のsqrt(T)を超えてTの2乗の速度で急膨張し、漸近分布はディッキー・フラー(DF)分布に代表される非標準的な分布に従う。
本来無関係な単位根過程同士を回帰分析にかけると、通常のt検定の臨界値(1.96など)が通用せず、高い確率で「有意な因果関係がある」と誤診する。これが見せかけの回帰(Spurious Regression)である。
対処法
- ADF検定(Augmented Dickey-Fuller test)による単位根の確認
- 差分系列の利用による定常化
- コインテグレーション(共和分)関係の検出
from statsmodels.tsa.stattools import adfuller
result = adfuller(series)
print(f"ADF statistic: {result[0]:.3f}, p-value: {result[1]:.3f}")用語集
- 単位根: 特性方程式の根がz=1になる状態。系列が非定常なランダムウォークとなる
- DF分布(ディッキー・フラー分布): 単位根検定で使う非標準的な漸近分布
- 見せかけの回帰: 無関係な非定常系列同士を回帰し誤って有意な関係を検出すること
- ADF検定: 単位根の有無を調べる代表的な統計検定
- 共和分: 個々には非定常でも線形結合が定常になる関係