非線形時系列モデルと統計的ポートフォリオ理論
平易に言うと: 株価の値動き自体は無相関に見えても、その変動の大きさ(2乗)には強い相関がある。この性質をARCHよりさらに一般化したモデルで捉え、さらに資産運用の最適配分理論へ応用する研究トピック。
前提知識
- [[arch-garch-volatility]] ARCH/GARCHモデルの基礎
- 最尤推定の基礎
- 平均分散ポートフォリオ理論の基礎
利用シーン
金融資産のリスク・リターン分析、依存構造を考慮した最適な資産配分(ポートフォリオ)の決定。研究・高度な実務での応用が中心。
株価収益率などの金融データでは、値そのものはほぼ無相関に見えても、その2乗は強い自己相関を持つことが知られている。これは系列が非独立かつ非正規であることを意味し、幾何ブラウン運動のような単純な確率モデルでは十分に説明できない。
CHARNモデル
ARCHモデルの分散の非線形性を、平均項も含めて一般化した枠組みがCHARN(Conditional Heteroscedastic AutoRegressive Nonlinear)モデルである。平均・分散の関数形を母数化することで、最尤法に基づく推定・検定・判別が可能になる。
局所漸近正規性(LAN)による最適性の理論
こうした非線形・非定常モデルでも、局所漸近正規性(LAN)という性質が成り立てば、独立標本の場合と同様に推定量の漸近的な効率限界を論じることができ、最尤推定量がその限界を達成する最適推定量であることが示せる。
統計的ポートフォリオ理論への応用
資産収益率の依存構造を考慮した最適ポートフォリオ係数の推定にも、この理論は応用されている。素朴な平均・分散ポートフォリオ推定量は、収益率過程の依存構造によっては最適ではなくなることがあり、スペクトル密度に基づくより精緻な推定が必要となる。
本節は2018年日本数学会秋季総合分科会での谷口正信氏(早稲田大学)の講演「時系列解析へのいざない」で紹介された研究の一部に基づく。
用語集
- CHARNモデル: ARCHの分散の非線形性を平均項も含め一般化したモデル
- 局所漸近正規性(LAN): 非独立標本でも推定量の漸近的な効率限界を論じられる性質
- 統計的ポートフォリオ理論: 時系列の依存構造を考慮した最適資産配分の理論
- 平均分散ポートフォリオ: リターンの平均と分散のみに基づく素朴な最適化手法