単位根過程と見せかけの回帰
平易に言うと: 一見時系列っぽく動いているが、実は過去のショックをすべて記憶し続ける「酔歩(ランダムウォーク)」であるケースがある。これを見抜かないと、無関係なデータ同士に因果関係があると誤って結論づけてしまう。
前提知識
- [[arima-basics]] ARIMAモデル、[[stationarity]] 定常性
- 仮説検定の基礎(有意水準、臨界値)
利用シーン
為替レート・株価・GDPなど経済データの分析。2つの経済指標を回帰分析にかける前に、単位根の有無を確認するのは標準的なチェック手順である。
AR(1)モデルの特性方程式1 - φz = 0の根がz = 1になるとき、システムは単位根を持つという。このとき系列はランダムウォーク状態となり、過去のショックを忘却せず無限の記憶を持つ。
中心極限定理の崩壊
単位根過程では分散が時間とともに爆発的に増大するため、サンプルサイズを増やしても平均や変動が正規分布に収束しない。これにより通常のt検定の臨界値が使えなくなる。
無関係な単位根過程同士を回帰分析にかけると、高い確率で有意な因果関係があると誤診する。これが見せかけの回帰(Spurious Regression)である。
対処法
- ADF検定による単位根の確認
- 差分系列の利用
- コインテグレーション(共和分)関係の検出
用語集
- 単位根: 特性方程式の根が1になり、系列が非定常なランダムウォークとなる状態
- ランダムウォーク: 過去のショックを忘却せず蓄積し続ける過程
- 見せかけの回帰: 無関係な非定常系列同士を回帰し、誤って有意な関係を検出すること
- ADF検定: 単位根の有無を調べる代表的な統計検定
- 共和分: 個々には非定常でも、線形結合が定常になる関係