時系列の性質と定常性
平易に言うと: 気温や株価のように「時間の順番」に意味があるデータを時系列データと呼ぶ。多くの分析手法は「データの性質が時間とともに変わらない」ことを前提にしており、その前提が成り立つかを確認するのが本章のテーマである。
前提知識
- 平均・分散・相関係数などの基礎統計
- 確率変数、確率過程の考え方
利用シーン
株価・気温・売上・アクセス数など、あらゆる時系列分析の出発点。ARIMAなどのモデルを当てはめる前に、対象データが前提を満たすかを確認する前処理として使う。
時系列データは観測順序に意味を持つデータであり、時間的な依存構造(自己相関)を持つ点が横断的なデータと異なる。
定常性とは
平均・分散・自己共分散が時間によらず一定である性質を弱定常性と呼ぶ。多くの古典的モデルはこの前提の上に成り立つ。
- トレンド(長期的な増加・減少傾向)
- 季節性(周期的な変動)
- 残差(トレンド・季節性を除いた不規則変動)
非定常な系列は差分変換や対数変換により定常化してから分析することが多い。
エルゴード性
実務上、観測できるのは確率過程のたった1本のサンプルパス(実現値の時系列)に過ぎない。本来、期待値を計算するには同一時点における無限の並行世界(アンサンブル)の平均が必要だが、このアンサンブル平均(空間平均)と1本のデータから得られる時間平均が一致する性質をエルゴード性と呼ぶ。
弱定常性とエルゴード性が揃って初めて、1本のデータから計算した自己相関関数などの時間平均が、母集団の性質を代表する統計量として意味を持つ。
用語集
- 自己相関: 同じ系列の異なる時点の値どうしの相関
- 弱定常性: 平均・分散・自己共分散が時間によらず一定である性質
- エルゴード性: 1本の時系列データの時間平均が、母集団全体の平均(アンサンブル平均)と一致する性質
- トレンド: 長期的な増加・減少の傾向
- 季節性: 一定周期で繰り返す変動